■2008.04.01 鹿児島から届いた結願の便り
昨年末、太山寺からの帰り道で、大きなリュックを背負った二人連れの歩き遍路とすれ違いました。お参りを済ませる前に、納経所が閉まるだろうと思われる時間帯です。
しばらく走ったのですが、二人の若者が妙に気になったので引き返してみました。すると、先に御朱印を受け、これからお参りに向かおうと納経所前の石段を下りてくるところでした。
「これからどうするん? 今晩泊まるとこあるん?」と聞くと、「太山寺の通夜堂で泊まるつもりだったが、この日は泊まれないと言われた」と言います。歩き遍路は明るいうちに、宿や野宿する場所の確保をしないといけません。毎夜の寝床を決めるのに結構疲れるのです。松山市には札所が八ヵ寺あり、八坂寺・浄土寺・石手寺・太山寺の四ヵ寺に通夜堂があります。主に歩き遍路の方が利用していますが、先客があったり、女性が泊まってたり、お寺の都合で利用できないことがあります。
これも何かのご縁、二人がお参りを済ませるのを待ち、石手寺にお願いし通夜堂に一泊させていただきました。彼らは翌日、また太山寺まで歩くようになったのですが。
若者のひとりは、三年間の期限付き教員契約が切れたとき、直感で遍路に行こうと思ったそうです。特に悩みや信仰心があったわけではありません。これまで学校で子供たちに感謝しなさいとか、人と協力しなさいとか言うけど、自分で体感した言葉でないと伝わらないと思い、それで歩き遍路の旅に出たのです。
何げない普段の生活がどれだけ有り難いことか、歩いてみて始めて分かったといいます。お接待や励ましの言葉をいただいたり、それだけで嬉しく、心が安らぐ。野宿すると、家で寝る、風呂に入れる、それがどんなに有り難いことか。
昨年11月12日に徳島を出立したという橋口君が、太山寺にたどり着くまでに体感したことをいろいろ語ってくれました。
その橋口君から、高野山奥の院前で撮影した写真を添えて、結願のハガキが送られてきました。
四国の皆様の優しい心やあたたかい言葉に触れ、そして励まされ、12月21日に結願することができました。目標に向かって努力することの大切さや、日頃当たり前だったことは実はとてもありがたくて感謝しなければならないこと、助け合いの大切さ等、貴重なことを学ばさせていただきました。これらの経験を今後の人生に生かしていきたいと思います。本当にありがとうございます。
橋口君は今年の春から本採用が決まり、再び教壇に立つ事になりました。この遍路旅で体感した事を子供達に伝えてくれることでしょう。いつの日か、彼の教え子が四国を旅する時、どこかで会えるような気もします。
文:石川達司(伊予路おへんろ倶楽部代表)
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